知的財産法 後期第12回
意匠権・商標権侵害事件における主張と立証(要件事実と抗弁)
意匠権・商標権侵害訴訟における攻撃防御方法
基礎知識
侵害訴訟の訴状には、請求の趣旨、請求の原因という記載項目がある。
・請求の趣旨とは、「訴訟の目的たる権利又は法律関係につき、いかなる裁判を求めるかを簡潔・正確に記載する部分」である。請求の原因とともに訴訟物を特定するものである。
判決において、この請求の趣旨に対応するものが、判決の「主文」である。
請求の原因とは、請求の趣旨と共に、あるいはこれを補足して、請求(訴訟物)を特定するために記載される部分である。ここでは、「請求を特定するための事実」のみならず、「請求を理由づける事実」が記載される。請求を理由付ける事実として記載すべき事実のうち、落としてはならないものが、「要件事実」である。
実体法規では、法律効果の発生(権利の発生・障害・消滅・阻止)の発生に必要な法律要件が定められ、法律要件を具体的事実が満たした場合にその法規が定める法律効果の発生が認められることになる。
「要件事実」とは、一定の法律効果が発生するために必要な具体的事実のことを言う。裁判においては、裁判を提起する側(原告側)は、法律が必要とする要件事実を裏付ける請求原因事実(主要事実)を主張・立証し、裁判を受けて立つ側(被告側)は、それを否認し、あるいは、抗弁事実の主張・立証をすることとなる。抗弁事実とは、請求原因事実と両立する事実であり、かつ、請求原因事実から生じる法律効果を覆滅(障害・消滅・阻止)する機能を有する事実である。
知的財産訴訟において、差し止め請求や損害賠償請求が認められるためには、その発生要件たる要件事実の存在を主張・立証しなければなりません。
主張と立証のための基礎知識
★弁論主義
弁論主義は判決手続の基本ルール。
・弁論主義は複数のルール(テーゼといわれる)により構成されている。
・〔第1テーゼ〕主張責任 裁判所は、当事者の主張しない事実を判決の基礎として、採用してはならない。(当事者が自己に有利な事実を主張しなかったときに敗訴する結果責任を主張責任と呼ぶ。)
・〔第2テーゼ〕自白法則 裁判所は、当事者に争いのない事実は、そのまま判決の基礎として採用しなければならない。
・〔第3テーゼ〕職権証拠調べの禁止 裁判所は、当事者間に争いのある事実を認定するには、当事者の申し出た証拠によらなければならない。
この弁論主義は、事実(主張)の提出のレベルから、提出された事実について争いがないレベルと、争いがあるレベルと、では、違った働き方をする。
争いのない事実は、これに反する裁判所の認定が排除され、証明の対象でなくなる。
裁判所に顕著な事実は、証拠によって認定するまでもない明らかな事実であり、判決の基礎としても裁判所の判断の公正さ・中立さが疑われないため、証明を要しない(民事訴訟法179条)。
公知の事実は、有名な事件や大災害などで、職務上知り得た事実とは、裁判官がその職務を行うにあたって知った事実をいう。これらも証明対象を制限する機能を有する。
・争いがある事実は、これを主張・立証しなければならない。
事実の種類
・主要事実:権利義務の発生・変更・消滅という法律効果の発生に直接必要な事実であり、要件事実に相当する具体的事実
・間接事実:主要事実の存否を推認させる事実
・補助事実:証拠の信用性に影響を与える事実
★法的三段論法
訴訟での議論は、法的三段論法に基づく。法律家はこの論法で議論しているので、技術的範囲の属否論もこの手法によることが望ましい、
三段論法は、論理的推論の型式のひとつで、大前提、小前提および結論という3個の命題から成る推論規則であり、最後の「結論」が真であるためには、前提が真であること、および論理の法則(同一律〈AはAである〉、無矛盾律〈Aかつ非Aでない〉、排中律〈Aまたは非A〉、および充足理由律〈どんな出来事も原因がある〉)が守られることを要する。
「大前提」には法則的に導き出される一般的な原理を置き、「小前提」には目前の具体的な事実を置き、「結論」を導き出す。
法的三段論法では、
「大前提」=法律 ・・・「小前提」=事実 ・・・「結論」(判決)
という形になる。
判決をするには、権利・法律関係の存否(これが訴訟物)を判断しなければならないが、権利・義務は、直接認識することはできない。そこで、権利・法律関係の存否は、その発生の根拠となる法規(その要件事実・・・実体法の規定における、権利の発生、障害、消滅等の各法律効果の発生要件に該当する具体的事実)を特定し、その要件事実に見合う、具体的事実、つまり主要事実の存否の判断(事実の認定)を行うこととなる。法律の要件事実が何かを大前提とし、事実認定で当該要件事実に対応する主要事実の存否を判断し、主要事実が存在すれば、当該法律の定める法律効果があるとされる。この関係が、法的思考の中心部分である、法的三段論法と呼ばれる考え方である。
1. 意匠権・商標権の効力
(意匠権の効力)
第二十三条 意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。ただし、その意匠権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
(商標権の効力)
第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
(定義)
第2条(・・・)
*「意匠権侵害」=第三者が権原なく「業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施する」行為
*「商標権侵害」=第三者が権原なく「指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする」行為
(1) 差止請求権
(差止請求権)
第三十七条 意匠権者又は専用実施権者は、自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
(差止請求権)
第三十六条 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
(2) 損害賠償請求権(民法709条、特許法102条)
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(損害の額の推定等)
(過失の推定)
第四十条 他人の意匠権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。ただし、第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権又は専用実施権の侵害については、この限りでない。
(特許法の準用)
意匠法第四十一条 特許法第百四条の二から第百五条まで(具体的態様の明示義務、特許権者等の権利行使の制限、主張の制限及び書類の提出等)、第百五条の二の十二から第百五条の六まで(損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し及び訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)及び第百六条(信用回復の措置)の規定は、意匠権又は専用実施権の侵害に準用する。
https://scrapbox.io/4IP-Law/商標法39条 で準用する特許法第百四条の二(具体的態様の明示義務)、第百四条の三第一項及び第二項(特許権者等の権利行使の制限)、第百五条(書類の提出等)、第百五条の二の十二から第百五条の六まで(損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し及び訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)並びに第百六条(信用回復の措置) (3) 信用回復措置請求権
(信用回復の措置)
意匠法41条,商標法13条の2,5項、商標法39条で準用する特許法第106条
故意又は過失により特許権又は専用実施権を侵害したことにより特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を害した者に対しては、裁判所は、特許権者又は専用実施権者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。
(4) 不当利得返還請求権(民法703条、第704条)
(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
2. 侵害に対して意匠権者・商標権者が講じ得る法的措置
(1) 訴え提起前の証拠収集手続き(民事訴訟法132条の2、132条の3、132条の4)
(訴えの提起前における照会)
第百三十二条の二 訴えを提起しようとする者が訴えの被告となるべき者に対し訴えの提起を予告する通知を書面でした場合(以下この章において当該通知を「予告通知」という。)には、その予告通知をした者(以下この章において「予告通知者」という。)は、その予告通知を受けた者に対し、その予告通知をした日から四月以内に限り、訴えの提起前に、訴えを提起した場合の主張又は立証を準備するために必要であることが明らかな事項について、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照会をすることができる。ただし、その照会が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一第百六十三条各号のいずれかに該当する照会
二相手方又は第三者の私生活についての秘密に関する事項についての照会であって、これに回答することにより、その相手方又は第三者が社会生活を営むのに支障を生ずるおそれがあるもの
三相手方又は第三者の営業秘密に関する事項についての照会
2前項第二号に規定する第三者の私生活についての秘密又は同項第三号に規定する第三者の営業秘密に関する事項についての照会については、相手方がこれに回答することをその第三者が承諾した場合には、これらの規定は、適用しない。
3予告通知の書面には、提起しようとする訴えに係る請求の要旨及び紛争の要点を記載しなければならない。
4第一項の照会は、既にした予告通知と重複する予告通知に基づいては、することができない。
第百三十二条の三 予告通知を受けた者(以下この章において「被予告通知者」という。)は、予告通知者に対し、その予告通知の書面に記載された前条第三項の請求の要旨及び紛争の要点に対する答弁の要旨を記載した書面でその予告通知に対する返答をしたときは、予告通知者に対し、その予告通知がされた日から四月以内に限り、訴えの提起前に、訴えを提起された場合の主張又は立証を準備するために必要であることが明らかな事項について、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照会をすることができる。この場合においては、同条第一項ただし書及び同条第二項の規定を準用する。
2前項の照会は、既にされた予告通知と重複する予告通知に対する返答に基づいては、することができない。
(訴えの提起前における証拠収集の処分)
第百三十二条の四 裁判所は、予告通知者又は前条第一項の返答をした被予告通知者の申立てにより、当該予告通知に係る訴えが提起された場合の立証に必要であることが明らかな証拠となるべきものについて、申立人がこれを自ら収集することが困難であると認められるときは、その予告通知又は返答の相手方(以下この章において単に「相手方」という。)の意見を聴いて、訴えの提起前に、その収集に係る次に掲げる処分をすることができる。ただし、その収集に要すべき時間又は嘱託を受けるべき者の負担が不相当なものとなることその他の事情により、相当でないと認めるときは、この限りでない。
一文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。以下この章において同じ。)の所持者にその文書の送付を嘱託すること。
二必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体(次条第一項第二号において「官公署等」という。)に嘱託すること。
三専門的な知識経験を有する者にその専門的な知識経験に基づく意見の陳述を嘱託すること。
四執行官に対し、物の形状、占有関係その他の現況について調査を命ずること。
2前項の処分の申立ては、予告通知がされた日から四月の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間の経過後にその申立てをすることについて相手方の同意があるときは、この限りでない。
3第一項の処分の申立ては、既にした予告通知と重複する予告通知又はこれに対する返答に基づいては、することができない。
4裁判所は、第一項の処分をした後において、同項ただし書に規定する事情により相当でないと認められるに至ったときは、その処分を取り消すことができる。
(2) 証拠保全(民事訴訟法234条)
(証拠保全)
第二百三十四条 裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。
(3) 仮処分申立(=仮の地位を定める仮処分)(民事保全法23条)
(仮処分命令の必要性等)
民事保全法第二十三条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
3第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。
4第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
(4) 本訴の提起
<意匠権者・商標権者側が主張すべき事実>
① 原告の意匠権・商標権の存在
② 被告の実施行為の内容
③ 権利侵害の主張
a. 登録意匠・登録商標の認定
・(登録意匠の範囲等)
・第二十四条 登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならない。
・2 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。
・(登録商標等の範囲)
・第二十七条 登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。
・2 指定商品又は指定役務の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならない。
・3 第一項の場合においては、第五条第四項の記載及び物件を考慮して、願書に記載した商標の記載の意義を解釈するものとする。
・
b. 対象行為の特定
c. 対象行為との対比
意匠:物品の同一・類似であること、意匠の形態が同一・類似(基本的構成態様・具体的構成態様)であることの主張立証
・商標:商品・役務の同一・類似であること、標章が同一・類似(外観・称呼・観念+取引の実情)であることの主張立証
④ 損害(損害賠償請求の場合)
3. 被告側の対抗策
(1) 請求の当否の検討
① 登録原簿、登録公報、包袋記録等の入手
② 公知意匠の調査、無効理由の存在など、対抗手段の検討
(2) 反論
① 非侵害の主張
(具体的態様の明示義務)
意匠法41条、商標法39条で準用する 特許法第百四条の二(具体的態様の明示義務)
特許法第104条の2 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。
・* 積極否認(=理由を明らかにした否認)
(a) 異なる態様での製造販売(原告の主張する実施行為とは別の態様での実施、あるいは使用)
(b) 実施・使用の中止
(c) 業としての登録意匠の実施ではない(商標の場合は、業としては、商標の定義:商標法2条の中に、商標の定義として「業として」があるので、業としての使用ではないとの主張は=商標法上の商標の使用ではないということになる)
(d) 非類似の主張
(e) 商標の場合、商標的使用態様ではないとの主張
② 権利消滅の抗弁
(a) 原告の意匠権・商標権の消滅(存続期間の満了)
(b) 権利喪失(移転登録等)
(c) 無効審決・取消審決の確定
③ 権利無効の抗弁(権利行使制限の抗弁)
意匠法41条で準用する特許法104条の3
商標法13条の2,5項、商標法39条で準用する特許法104条の3,1項,2項
(特許権者等の権利行使の制限)
第百四条の三 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。
2 前項の規定による攻撃又は防御の方法については、これが審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
3 第百二十三条第二項の規定は、当該特許に係る発明について特許無効審判を請求することができる者以外の者が第一項の規定による攻撃又は防御の方法を提出することを妨げない。
④ 効力の制限
(a) 意匠法36条で準用する特許法69条1項,2項
第六十九条 特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。
2 特許権の効力は、次に掲げる物には、及ばない。
一 単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置その他の物
二 特許出願の時から日本国内にある物
商標法26条
(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
二 当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
三 当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定役務に類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
四 当該指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について慣用されている商標
五 商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
2 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。
3 商標権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。ただし、その行為が不正競争の目的でされない場合に限る。
一 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第八十四号。以下この項において「特定農林水産物等名称保護法」という。)第三条第一項(特定農林水産物等名称保護法第三十条において読み替えて適用する場合を含む。次号及び第三号において同じ。)の規定により特定農林水産物等名称保護法第六条の登録に係る特定農林水産物等名称保護法第二条第二項に規定する特定農林水産物等(当該登録に係る特定農林水産物等を主な原料又は材料として製造され、又は加工された同条第一項に規定する農林水産物等を含む。次号及び第三号において「登録に係る特定農林水産物等」という。)又はその包装に同条第三項に規定する地理的表示(次号及び第三号において「地理的表示」という。)を付する行為
二 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により登録に係る特定農林水産物等又はその包装に地理的表示を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
三 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により登録に係る特定農林水産物等に関する広告、価格表若しくは取引書類に地理的表示を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に地理的表示を付して電磁的方法により提供する行為
(b) 消尽論
「消尽論」=知的財産権者又は実施権者が当該製品を国内において譲渡した場合には、当該製品については知的財産権はその目的を達したものとして、その効力は、当該実施行為には及ばないとする理論。
(c) 真性商品の並行輸入:最高裁平成15年2月27日第一小法廷判決民集57巻2号125頁(フレッド・ペリィ事件)
・商標権者以外の者が、我が国における商標権の指定商品と同一の商品につき、その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は、許諾を受けない限り、商標権を侵害する(商標法2条3項、25条)。しかし、そのような商品の輸入であっても、
・(1) 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり、
・(2) 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって、
・(3) 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから、当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合
・には、いわゆる真正商品の並行輸入として、商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。けだし、商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法1条)、上記各要件を満たすいわゆる真正商品の並行輸入は、商標の機能である出所表示機能及び品質保証機能を害することがなく、商標の使用をする者の業務上の信用及び需要者の利益を損なわず、実質的に違法性がないということができるからである。
(d) 契約による実施権
意匠法23条3項で準用する特許法99条
(通常実施権の対抗力)
第99条 通常実施権は、その発生後にその特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する。
商標法に対応条文なし
(e) 法定通常実施権
(i) 先使用権
(先使用による通常実施権)
(ii)冒認者による移転登録前の通常実施権
(f) 公知意匠の抗弁
(g) 侵害に対する抗弁
(i) 出願経過の参酌
・包袋禁反言・審理経過エストッペル
(ii) 公知意匠の参酌 (登録意匠の要部認定のために)
(g) 取引の実情の参酌
(h) 損害に対する抗弁
・商標法:損害不発生の抗弁〔小僧寿し事件〕—最三小判平成9・3・11
(i) 権利濫用の抗弁
(3) 想定される対応策
① 侵害の主張への反論・法的措置に応訴
② 債務不存在確認請求訴訟の提起
③ 知財権によるカウンター
④ 不正競争防止法に基づく差止請求・損害賠償請求等
(定義)
第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
(・・・)
二十一 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為
⑤ 無効審判の申立
⑥ 設計変更
⑦ 和解交渉・・上記③のカウンター知財も和解交渉に使える
・4. 民法(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
民事訴訟法
(裁判所及び当事者の責務)
第2条 裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない
・請求の趣旨と要件事実
民事訴訟規則第53条 (訴状の記載事項・法第133条)
1 訴状には、請求の趣旨及び請求の原因(請求を特定するのに必要な事実をいう。)を記載するほか、請求を理由づける事実を具体的に記載し、かつ、立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実で重要なもの及び証拠を記載しなければならない。
2 訴状に事実についての主張を記載するには、できる限り、請求を理由づける事実についての主張と当該事実に関連する事実についての主張とを区別して記載しなければならない。
3 攻撃又は防御の方法を記載した訴状は、準備書面を兼ねるものとする。
4 訴状には、第1項に規定する事項のほか、原告又はその代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)を記載しなければならない。
以上